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「女性差別撤廃条約」と「女性差別撤廃委員会」、ふたつのCEDAWとは?

2024.10.21

世界中で起きている、性別を理由とした差別。こうした差別をなくすために国連で採択された「女性差別撤廃条約」、そして条約が守られるように締約国へ働きかける「女性差別撤廃委員会」をご存じですか?
女性差別撤廃条約と女性差別撤廃委員会は、どちらも英語でCEDAWと表記されます。この記事では、いま知っておきたい両方のCEDAWについて、詳しく解説します。

目次
・女性差別撤廃条約とは?
・女性差別撤廃委員会とは?

女性差別撤廃条約とは?

女子差別撤廃条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としています。具体的には、「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し、政治的及び公的活動、並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適当な措置をとることを求めています*1

女性差別撤廃条約においては、女性という性に基づいて区別、排除または制限することが、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、その他いかなる分野においても差別にあたると定義されています。

1979年の第34回国連総会において採択されたのち、1981年に発効された条約で、締約国数は2021年2月時点で189カ国です*2。日本も1985年に締結をし*3、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法の制定につながりました。

しかしながら日本は、この条約をより効果的なものにするために1999年に採択された「女性差別撤廃条約選択議定書」には批准していません。

この選択議定書に批准すると、同条約で保障されている権利が侵害されたときに、国連女性差別撤廃委員会に通報し、救済を申し立てることができる「個人通報制度」と、その通報された内容をもとに女性差別撤廃委員会が調査を行い、結果と措置について締約国に勧告する「調査制度」が利用可能になります*4。この勧告に法的な拘束力はありませんが、国外・国内双方に対して、一定の影響力がもたらされることが期待できます。

日本では現在、女性差別撤廃条約選択議定書に批准することを強く要望する意見書が多く提出されています*5

女性差別撤廃委員会とは?

女性差別撤廃委員会は、女子差別撤廃条約の実施に関する進捗状況を検討するために、1982年に設置された委員会です。条約締約国による選挙で選ばれた女性の権利に関する専門家23名が委員を務め、日本からは現在、秋月弘子(あきづき・ひろこ)亜細亜大学教授が任命されています(委員の任期は4年)。上記の「個人通報制度」と「調査制度」において調査・勧告を行うほか、毎年会合を開いて締約国が提出する報告を検討し、その活動を国連総会に報告しています*6

日本に対しては、これまで「選択的夫婦別氏制度の導入」、「堕胎罪撤廃」、「配偶者同意要件廃⽌」などにつき勧告が行われていますが、少なくともこれら3つについては、日本国内において未だ実現がなされていません。

そんな中、2024年10月ジュネーブで開催される第89回女性差別撤廃委員会(CEDAW:Committee on the Elimination of Discrimination Against Women)では、8年ぶりに日本政府が審査されます。
ジョイセフは6団体と連携し、日本におけるSRHR課題に関する市民社会レポート(以下「SRHR市民社会レポート」)をとりまとめ、提出しました。

女性差別撤廃委員会の日本政府審査に向け、市民社会レポートを提出しました

*1 「女子差別撤廃条約」(外務省), 女子差別撤廃条約|外務省 (mofa.go.jp) *2 「女性差別撤廃条約」(内閣府男女共同参画局), 女子差別撤廃条約 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp) *3 「資料3-1 女性差別撤廃条約(CEDAW)について(概要)」(内閣府男女共同参画局), 男女共同参画局 (gender.go.jp) *4 「女性差別撤廃条約・選択議定書」(国連広報センター), 女子差別撤廃条約・選択議定書 | 国連広報センター (unic.or.jp)を参照。 *5 例えば、「女子差別撤廃条約の選択議定書の採択を求める意見書」(日本弁護士連合会), 日本弁護士連合会:女子差別撤廃条約の選択議定書の採択を求める意見書 (nichibenren.or.jp), 「女子差別撤廃条約選択議定書の早期批准を求める要望書」(国際婦人年連絡会 ), 2011年6月 日 (iwylg-jp.com), 「国連女性差別撤廃委員会の日本審議にむけて、 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める要望書 」(女性差別撤廃条約実現アクション),  CEDAW日本審議にむけて、OP批准をもとめる要望書(2023.11).pdf など。 *6「女性差別撤廃委員会」(内閣府男女共同参画局), 女子差別撤廃委員会 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

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コミュニケーション デザイングループ
ジョイセフ コミュニケーションデザイン室メンバーによる投稿です。様々なトピックの情報・写真・動画を紹介していきたいと考えています