SRHRとSDGs
持続可能な開発目標(SDGs)が2015年に国連で策定されてから早くも5年以上の年月が経ち、「SDGs」という言葉を日常生活の中でも見聞きするようになりました。日本国内でも積極的にSDGsに取り組む企業も増えてきました。
SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)は、2015年までに一定の効果を上げることに成功しました。しかし、地球温暖化などの環境問題やすべての人の平等、妊産婦死亡、感染症など、地球規模で取り組むべき問題がたくさん残されています。
そこで、この地球社会が持続するように、すべての国のすべての人が連携して取り組んでいこうと定められたのが、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)なのです。MDGsを引き継いだSDGsもまた、世界各国の取り組みによって、それぞれの目標を達成することが求められています。SDGsはMDGsで行われてきた内容を発展させたものですが、MDGsと決定的な違いがあります。
MDGsが開発途上国の発展を目的としていたのに対して、SDGsは途上国、先進国を問わず解決すべき共通の課題を明示しています。
SDGsでは2030年までに達成すべき17の「目標(Goal)」が設定され、それぞれの目標に、延べ169の具体的なターゲット(数値目標など)が定められています。
SDGsの全文が掲載されている「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(英語・日本語(外務省仮訳))は、こちら。
ジョイセフの活動に特に関係してくるのはSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、そして目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の3つです。
目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットのうち、3.1は「2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を、出生10万人あたり70未満に削減する」。ジョイセフが途上国で手掛けている、母子保健の向上を目指し、妊産婦死亡率の改善に向けたプロジェクトは、まさにこのターゲットを実現するための取り組みです。
また、日本国内でジョイセフが展開しているI LADY.などは、 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」のターゲット5.6「国際人口開発会議(ICPD)の行動計画及び(世界女性会議)の北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利(SRHR)への普遍的アクセスを確保する」に該当します。
ジョイセフの使命である「すべての人にセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」は、SDG3とSDG5の達成のための最低限の条件です。
以下のSDG3と5のターゲットに含まれる、次の部分がセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツに該当します。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
- 3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70未満に削減する。
- 3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12以下まで減らし、5歳未満児の死亡率を少なくとも出生 1,000 件中25以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
- 3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
- 3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
- 3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
- 3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
- 3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
- 3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
- 3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
- 5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
- 5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・ 私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
- 5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
- 5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
- 5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
- 5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び(世界女性会議の)北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
さらにジョイセフの活動は、国内外問わず、「パートナーシップ」を大切にしています。
SDGsでいうと、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
途上国では、地域住民をはじめ、現地のNGOや現地政府・行政と連携し、国内外の企業・日本政府・市民の支援者など多岐にわたる協力や支援で活動が成り立っています。国内では、ホワイトリボンランの全国拠点や各都道府県の助産師会、地方自治体、男女共同参画センターなどとの連携なしには、活動を継続することができません。。
SDGsの基本理念は、「誰一人取り残さない」です。最も脆弱で、社会の発展から取り残されがちな人々への配慮は、SDGsにおいても重要な柱となっています。そのため、目標1に「貧困をなくそう」が定められているのです。ジョイセフは、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念と、ジョイセフが大切にする人権としての健康、ジェンダー平等は、合致しているとと考えています。だからこそ、ジェンダー格差の解消をSDGs達成への近道と位置づけ、この基本理念に沿った取り組みを継続しているのです。