ひとジョイセフと一緒に、世界を変えていくひと

ホテリエからジョイセフ職員に転身。思い出のランドセルギフト担当・栗林桃乃が臨む未来とは。

ジョイセフ パートナーシップグループ 思い出のランドセルギフト担当

栗林 桃乃

2023.7.28

ジョイセフは、日本の各家庭から寄附されたランドセルを、学用品とともにアフガニスタンの子どもたちに届ける「思い出のランドセルギフト」を、2004年から実施しています。

20年弱続くこの支援を現在担当しているのは、ジョイセフに入職して2年になる栗林桃乃。日本の人々に働きかけ、ジョイセフ活動地への支援の足がかりを作るために、先頭に立ってプロジェクトを仕切っている栗林の、これまでとこれからをお伝えします。


日本で子どもたちの学びを支えてきた「ランドセル」。日本とアフガニスタンの橋渡しに

-「思い出のランドセルギフト」の内容と、その中でどのような仕事を担当しているのか教えてください。

思い出のランドセルギフト事業は、日本で役目を終えたランドセルをアフガニスタンの子どもたち、とりわけ教育の機会に恵まれない女の子たちの就学に役立てる活動です。私はこの事業の全体統括として、国内での周知活動をメインに活動地と日本の橋渡し役をしています。

-日本の人にも影響がある活動だと考えているそうですね。それはなぜでしょうか。

この活動の背景には、ジェンダー格差、貧困、戦争や平和、教育といった、SDGsに関わりがあって、日本に住む私たちもハッとするような課題があります。

この活動は、日本人の多くが手にした事があり、日本の子どもたちの学びを支えてきた「ランドセル」というツールを通して、世界の現状や課題に目を向け、一方で「日本はどうなんだろう」と考えるきっかけになると考えています。アフガニスタンの子どもたちの学びを支援している活動ですが、日本の子どもたちやその家族にとっても、社会で起きていることを知り、考える機会を創れているのではと思います。

日本の人々を元気にと、進んだホテリエの道。そこで培った能力が今も活きている

-ジョイセフで働きはじめた経緯を教えてください。

ジョイセフに入職したのは2022年2月、28歳の時です。高校2年生だった時に東日本大震災を経験した私は、被災地で救助活動や避難所での生活をサポートする自衛官たちの姿を見て、いつしか人を助けること、楽しませることに興味をもつようになりました。その後のアルバイト選びも就職活動も、その興味関心が根底にあったように思います。

大学時代には、経済学部で「開発途上国の人々が豊かに暮らせるようになるには」といったことをテーマに勉強し、開発途上国にあるジェンダーの課題に興味を持ちました。ゼミ活動でジョイセフに出会い、2015年の9月頃、ジョイセフフレンズ(マンスリーサポーター)としてザンビアへの視察に同行しました。

アメリカへの短期留学も経験し、裕福でも貧しくても関係なく、心身ともに健康でより良い暮らしを求めるモチベーションの高さや考え方に触れました。そのモチベーションは日本ではなかなかないことです。帰国後、電車内で疲れて寝ているたくさんのサラリーマンを見て「海外よりも日本をどうにかしなければ」と思いました。2016年に新卒で旅館・ホテルの運営会社へ入社したのは、日本に暮らす人々を元気にできて、日本の強みや素晴らしさを国内外の人に発信できる仕事がしたいと考えたからです。

でも、社会人になった後も「いつかジョイセフで世界の女性への支援を」と思っていた他、やってみたいことがたくさんありました。「30歳までにやりたいことを一通り手を出してやってみる」と数年後にキャリアを区切ってホテルでの仕事に終止符を打ち、次に進もうと転職を考えていました。その時に大学時代から交流のあったジョイセフ職員から人材を募集しているとの連絡をもらい、選考を受けることに。ご縁あって、ジョイセフに転職しました。

-旅館・ホテルの運営会社では、どのような仕事をしていましたか。

一人ひとりの社員が、運営に関わることはなんでもやる「マルチタスク」という方法を取り入れている会社だったので、私もフロント・食事サービス・客室清掃といったサービス全般をこなしながら、業務改善をしたり、季節ごとに企画を考えたりしていました。最後の2年間には、新ブランドホテルの立ち上げと、そのホテルの広報を担当するようになり、企画、リリース、またメディア対応も行っていました。その一環でテレビやYouTubeに出演した経験は、今となっては非常に貴重であったと思います。

-現在やっていることで、前職での経験が役立っていることはなんでしょうか。

一つは、「思い出のランドセルギフト」への参加方法の提案として、春は卒業シーズン、夏は自由研究といった季節や世間の話題に沿った企画作りです。夏休みの自由研究に使えるツールは今年もホームページで公開しているので、ぜひ活用してもらいたいです。

☆夏休みの自由研究や調べ学習に役立つ学習ツールページ

また、より多くの方にこの活動のことを知っていただくために、メディアの記者への発信もしています。その中で、前職での経験は非常に活きていると思います。時期ごとの話題と、思い出のランドセルギフトがマッチした記事が世の中に発信され、多くの方に反応をいただけた時には、とても嬉しかったです。

性別関係なく自分自身を見てもらう。性に囚われない「自分らしさ」の追求を

-ジョイセフに入ったことで、どのような変化がありましたか。

学生の時は開発途上国の課題としか思っていなかったのですが、ジョイセフに入ってSRHRを理解し、自分事になりました。自分らしさを表現するのに女らしさは必要なのか? 「女性であること」が生きる上で、時に弊害になる社会って生きづらくないか? といった、自分が生きてきてこれまでモヤモヤしていたことの根底が繋がったような気がしています。

ジョイセフは、人の命と健康を損なう問題を未然に「防ぐ」ことが得意な団体なので、職員の健康診断メニューも選択肢が豊富で(笑)。前職での健康診断はものすごく基本的なメニューしかなかなく、正直、毎年「面倒臭いな〜」くらいの気持ちだったのですが、ジョイセフ入職時に人生で初めて内臓と婦人科の検査を受けたら、今までストレスによる肋間神経痛だと思っていたものが、原因不明の胆嚢結石症だったことや、HPVウイルスによる、がん化手前の軽度の「子宮頸部異形成」であることがわかって、深刻な状況になる前に、精密検査や治療を受けることができました。

ジョイセフで働くことで、自分自身がとてもエンパワーされていると実感しますし、身近な同世代であるきょうだいや友人、大学の後輩には、若いときこそ健康が一番だから必ず健康診断を受けるように、と実体験とともに伝えています。

また、職員としてだけでなく、ジョイセフが養成するI LADY.ピア・アクティビスト(SRHRの知識を同世代の仲間に伝え、自らも行動するユース世代アクティビスト)の研修も受け、仲間とともに活動を広げています。

-今後挑戦してみたいことはなんでしょうか。

プライベートでは「性に囚われない生き方」を実践したいと思っています。性別関係なく「栗林桃乃」を「栗林桃乃」として見てもらえる、自分らしい生き方をどうやって体現できるのか、日々漠然と考えています。

また、日本では今、幼い時期から「自分らしさ」の体現の仕方や考え方が変化していて、ランドセルの色やデザインも多様化しているので、ジョイセフでは、日本の子どもたちやその家族向けに、ランドセルの色選びといった身近な切り口でジェンダーについてのワークショップをしたり、企業には社会貢献を通じた地域との繋がりや海外との繋がりをアシストしたりなど、ジョイセフの取り組む課題や活動地域と日本の人たちを橋渡しできるようにどんどん挑戦していきたいと思います。日本を含め、ジョイセフが活動するすべての国を、より暮らしやすい社会にしたいです。

-最後に、この記事を読んでいる人へメッセージをお願いします。

非営利団体に対しての印象や考えはさまざまだと思いますが、民間企業で働いている感覚・熱量と変わりないというのが、NGOに入ってみての感想です。私はジョイセフの職員としては最年少になりますが、NGO職員という職業が日本の社会の中でよりポピュラーになって、働きやすくなったり、誰もが活動に参加しやすくなったら嬉しいです。社会をよりよくするために、NGOはたくさんの人との連携を必要としています。世界で本来ならば守れるはずの命、健康、権利を守る活動に、ジョイセフと一緒に参加してください。

栗林 桃乃 プロフィール
国内外のジェンダーの課題に興味を持ち、大学時代〜現在ジョイセフフレンズとしてジョイセフの支援をしている。いつかジョイセフで活動をと志し、2022年にジョイセフに入職。前職はホテリエ。接客で身につけた対人スキルと2年ほど広報・企画として働いた経験を活かし現在はジョイセフで活動中。国内支援者連携窓口、思い出のランドセルギフト事業統括。日本の若者を性に関する悩みや課題から解放したい思いでI LADY. の活動もサポート。性にとらわれない生き方を実践したい。パートナーとコーギー犬との3人家族。趣味はパートナーと走るロードバイク。

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします