国内事業

ジョイセフは、基本的人権であるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)を推進する、日本生まれの国際協力NGOです。アフリカなどの低中所得国を中心に、医療・ヘルスケア・情報へのアクセス改善に取り組み、妊産婦や女性、脆弱な立場にある人々の命と健康が守られ、一人ひとりがエンパワーされるための活動を続けています。

一方で、私たちは国内におけるジェンダー格差やSRHRの課題に対して、その深刻さに危機感を持っています。日本は優れた医療や健康保険のしくみが整っており、世界で最も妊産婦死亡率が少ない国のひとつ。しかしSRHRの観点から見ると、性教育の遅れ、女性が選べる避妊法の少なさ、多様な選択を認めない結婚制度、女性や性的マイノリティの権利制限など、非常に多くの課題を抱えているのです。
こうした日本の現状を変えるために、ジョイセフは国内でもSRHRを普及する活動を広げてきました。特に若い世代と女性への支援を中心に、主に4つの事業に取り組んでいます。

①若者対象のSRHR推進事業

自治体や学校と連携し、全国各地でSRHR関連の人材養成や出前講座、情報提供を行っています。

ピア・アクティビスト養成事業
ピア・アクティビストとは、SRHRについて自ら学び、同世代の仲間に知識や気づきを広げていく若者アクティビストです。ジョイセフは自治体や地域の団体などと連携し、地域で活躍するピア・アクティビスト(15~29歳)を養成しています。研修から始まり、活動プラン作成や実際の活動を支援します。
出前講座
全国の学校や自治体で、SRHRの基本知識の講座を実施しています。ジョイセフの講師が学校等を訪問し、月経や妊娠、性感染症、ジェンダー平等など、性と生殖に関する学びを提供。気軽に参加でき、自分への問いかけや気づきを広げられるプログラムです。
SRHRの情報提供
対面およびオンラインでのSRHRに関するイベントや、SNS/ウェブサイトでの情報発信に力を入れています。
教材やオリジナルツール
SRHRを身近に自分ごととして学べる、さまざまなオリジナル教材やツールを開発しています。10-20代の若者が必要としている情報を盛り込んだ「SRHRノート」、自分らしい選択をするための「ライフスキル」が身につく学習キット「I LADY CARD」、リング購入ひとつにつき100円が世界の支援活動に寄付される「チャリティピンキーリング」などがあります。
意識調査(性と恋愛)
2019年から隔年で実施している意識調査では、15-29歳の日本の若者を対象に、「リアルな恋愛・結婚・家族観」「性・セックスの意識」「避妊・性感染症予防の本音」「セクシュアル・ヘルスについて」「自分の人生を決められるか」の5つのテーマでアンケートを実施。若者をとりまくSRHRの状況がデータで可視化されます。2023年は5800人の回答を得ました。
調査結果からは、性に関して若者がアクセスできる信頼性の高い情報源が、非常に限られていることがわかります。特に男性は深刻で、たとえば性的同意の大切さを意識する一方、どうすればいいかわからない、情報や相談相手が得られないという声も目立ちました。
こうした性の実態や課題を社会へ向けて発信し、SRHR啓発に役立てます。ジョイセフのイベントや出前講座、ピア・アクティビスト養成研修でも調査結果を活用し、一人ひとりの行動変容や活動プランにつなげています。

②子宮頸がんの予防啓発事業

子宮頸がんの主な原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。性交渉を経験した女性の5~8割がHPVに感染するとされ、その一部で細胞が異常な変化を起こした「子宮頸部異形成」になり、やがて「前がん病変」を経てがんに移行します。

子宮頸がんは検診で発見しやすく、前がん病変や早期の段階なら子宮温存も可能です。しかし進行すれば子宮だけでなく卵巣やリンパも含めた広範囲の摘出が必要になり、他臓器に転移すると生存率も低くなるため、早期発見がきわめて重要です。

ワクチン接種と検診で予防可能な唯一のがんであるにもかかわらず、先進国では日本のみ、子宮頸がんの患者数が増えています。毎年1万人が罹患する深刻な状況で、性行為の低年齢化とともに、若年層の罹患率も高くなっています。

HPV感染による疾患は子宮頸がんだけではありません。中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなど、さまざまながんの原因となっています。このためHPVワクチン接種は、女性だけでなく男性も対象となります。(定期接種は女子のみ)

ジョイセフは子宮頸がん予防を推進するため、ワクチン接種や検診による早期発見の情報提供を行っています。また、若者を対象に行う「性と恋愛に関する意識調査」の結果を公表し、リアルな現状を明らかにすることで、国内における子宮頸がん予防への意識を高めるきっかけをつくります。

③被災地の女性の健康支援事業

地震や津波、豪雨などの大規模災害の発生時に、弱い立場に置かれ支援のニーズが見落とされがちな女性や母子を対象に、支援活動を行ってきました。現地の助産師会やNPOといったネットワーク、支援企業との連携を通して、被災した方々のニーズに沿ったケアや物資支援を実施します。これまでに東日本大震災、西日本豪雨、熊本地震、能登半島地震の際に支援してきました。

  • 被災した女性・母子が必要とする物資支援
  • 助産師による産前産後ケア、カウンセリングの支援
  • 母子が集まり安らげる場づくりの支援
  • 被災地の産後女性を元気にするイベントの開催
  • I LADY.ピアアクティビスト養成研修の開催

④法人/団体/学校/コミュニティーとの連携SRHR啓発事業

企業の社員、さまざまな団体や協会のメンバー、学校・大学教員およびPTAに向けて、SRHRに関する理解を深めるための研修を実施しています。