ミャンマーってどんなところ?
基本情報
国名 | ミャンマー連邦共和国 Republic of the Union of Myanmar |
---|---|
面積 | 68万平方キロメートル(日本の約1.8倍) |
人口 | 5,114万人(2019年推計:ミャンマー入国管理・人口省発表) |
首都 | ネーピードー |
民族 | 135の民族がおり、そのうち約7割をビルマ族が占める |
言語 | ミャンマー語(公用語)、シャン語、カレン語 など |
宗教 | 仏教(90%)、キリスト教、イスラム教 など |
※出典:外務省のページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uganda/data.html, 2024.11.16参照)
妊産婦死亡率(1) | 179(2020, Trends in maternal mortality)*1 |
---|---|
訓練を受けた人による分娩介助の割合 | 60%(世界人口白書2023) |
児童婚の割合 | 16% (世界人口白書2023) |
人道支援を必要としている女性及び少女の数 | 約970万人(国連人道問題調整事務所 2024) *2 |
妊産婦(にんさんぷ)死亡率:妊産婦が妊娠中もしくは出産してから42日以内に、それに関連することで亡くなる割合(対10万出生)*1 https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/366225/9789240068759-eng.pdf?sequence=1*2 https://www.unocha.org/publications/report/myanmar/myanmar-humanitarian-needs-and-response-plan-2024-addendum(P10)
1.多民族国家
ミャンマーはバングラデシュ、インド、中国、ラオス、タイの5カ国と国境を接する東南アジアの国のひとつです。135の民族が存在するといわれる多民族国家で、人口の7割がビルマ族です。そのほかの3割が130以上の少数民族に属しており、それぞれが独自の言語や特定の信仰を持っているそうです。食文化や「ロンジー」と呼ばれる、巻きスカートのような伝統衣装(でんとういしょう)の柄にも多様性があります。
多民族国家を治めることは難しく、1948年にイギリスから独立した後、60年以上にわたって国軍と少数民族の武装勢力との衝突(しょうとつ)が続きました。これにより、何十万もの人々が家を追われました。2011年の民主化後に和解が進められ、多くの少数民族と停戦に合意できましたが、2021年2月に起きた軍事クーデターにより、再びその衝突が激しくなっています。
2023年12月時点の国連人道問題調整事務所(OCHA)の報告によると、ミャンマーでは全人口の3分の1に当たる約1860万人が人道支援(しえん)を必要としており、その52%が女性や少女たちです*2。
また、ミャンマーには、国の憲法で認められていない民族も暮らしています。ラカイン州には「ロヒンギャ」と呼ばれるイスラム教徒が居住しており、近年、仏教徒との衝突が起こり、バングラデシュなどの近隣諸国(きんりんしょこく)へ移動するイスラム教徒の難民が増え、大きな人道的国際問題となっています。
2.寄附をした人の数が世界トップレベル
「世界寄付指数」2024年の報告によると、ミャンマーは過去1カ月に寄附したと答えた人の数が、1位のインドネシアに次ぐ世界2位でした。これ以前の年もミャンマーは寄付する人が世界で最も多い国のひとつにランキングされています。これは、現世での行いが来世をより良いものにする可能性を高めるという仏教からくる信念の影響によるものと言われています。
ジョイセフが活動している地域でも、寄付文化が大きく貢献しています。エヤワディ地域の一部で、産前健診(さんぜんけんしん)を受ける時の交通費や、医療施設(いりょうしせつ)で出産する時の食事代といった経済的な負担を減らすために、医療施設を訪れた女性に補助券(バウチャー)を発行し、後日そのバウチャーを現金に換(か)える仕組み(バウチャーシステム)を導入しました。その資金は地域住民からの寄付によって運営されています。
お金だけではありません。ほかの人のために献身的(けんしんてき)に尽(つ)くす人々が多くいます。特に2021年に起きた軍事クーデター後、ミャンマーの人々の生活は多くの制約を受け難しい状況(じょうきょう)が続いています。そういう中でも、妊産婦(にんさんぷ)の健康を守り「母子保健推進員」と呼ばれている地域のボランティアさん、農村保健所の助産師や看護師、保健局の医師や専門職員たち、そしてミャンマー人のジョイセフスタッフは献身的に活動を続けています。
3.世界有数の米どころ
ミャンマー人の主食はお米です。ミャンマー風カレー、スープ、サラダ、野菜料理などとともに、日常的に食べられています。お米の消費量は日本の3倍とも言われています。世界最大の米の輸出国だった時代もあったそうです(*3)。
また、お米を使った麺(めん)やデザートも種類が豊富です。ミャンマー人のソールフードともいわれる「モヒンガー」は、米からできた細い麺に、ゆで卵、豆の天ぷら、揚(あ)げたニンニクなどをトッピングにして、ナマズを使ったスープをかけて、レモンをしぼり、朝食に食べられています。
*3 https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/world/myanmar/about.html
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/160331_27cr9_07_mmr.pdf
今起きている問題
ジョイセフが活動しているエヤワディ地域には「エヤワディ川」というミャンマー最大の川があり、デルタ地帯を形成しています(*4)。国内最大の米の生産地で、総生産量の3割を占めています。豊かな水源は人々に恵みをもたらす一方で、洪水(こうずい)や道路の冠水(かんすい)など人々の生活に影響があります(*5、6)。雨季には道路が冠水して船での移動が必要になる場所があり、妊婦さんたちが保健施設で産前健診を受けたり、施設で出産したりする妨げになっています。
*4 http://bungakubu.kokushikan.ac.jp/chiri/earthwacht/May2012/RS2012May.html*5 https://ipad.fas.usda.gov/highlights/2023/11/Burma/index.pdf*6 https://www.mishima-kaiun.or.jp/wp-mishima/wp-content/uploads/2023/06/JNo8-aye-chan-pwint.pdf
エヤワディ地域は、ミャンマー国内で妊産婦死亡数が最も多い場所です。その主な理由のひとつに、経済的な理由があげられます。この地域には季節労働者が多く、貧困状態(ひんこんじょうたい)にある世帯が多くあります。妊婦健診や施設での出産にかかる保健医療サービスは無料ですが、医療施設までのボートやバイクなどの交通費や、入院中の食事代は個人で出さなければいけません。また妊婦健診を受ければその日に働くことができず、収入が減ってしまいます。金銭的な理由から健診を受けなかったり、医療資格を持たない介助者による出産を選ぶ人が多くいるのです。
この状況を変えるために、ジョイセフはこの地域の一部に2022年から補助券(バウチャー)制度を導入しました。これにより、女性たちの経済的な負担を軽減し、必要な妊婦保健サービスが利用できるようになりました。バウチャー制度を取り入れた村は、取り入れていない村に比べて、産前健診、施設での出産、専門技能者の立ち合いによる出産、産後健診の受診率(じゅしんりつ)が高いことがわかっています。
クーデター後の社会的混乱が現在も続いているために米や油などの食品の価格が上昇し、交通費も値上がりし、バウチャー制度が導入されていない村にいる女性たちは、保健サービスを利用することがより一層難しくなっています。バウチャー制度をほかの村にも広め、より多くの女性たちが妊産婦健診や施設での出産を選べるようにするための環境(かんきょう)づくりをサポートする必要があります。
医療施設の受診率が低いのは、妊婦健診を受けずに自宅出産をした母親や、夫の母親からの意見に頼る人が多いことも理由となっています。その背景には、妊婦が、妊娠や出産の正しい知識や情報を得る機会が少ない状況があります。
ジョイセフは、地域に暮らす妊産婦やその家族に、健診や保健施設での出産の大切さを伝える啓発活動(けいはつかつどう)を行う母子保健推進員という約3600名の保健ボランティアを養成しました。彼女たちは、妊産婦と農村保健所の助産師をつなぐ役割を担(にな)っています。コロナ禍(か)も、クーデター後も、変わらず活動を続けていますが、彼女たちが研修を受けてからすでに何年も経(た)っています。スキルアップのための研修が求められています。
その他参考情報ソース
プロジェクトを「知る」
- 「社会・文化的バリアを越える」をサポートするための教材「ディスカッション・カード」づくり(2023年4月)
- (動画)逆境の中でも活動を続けるミャンマー母子保健推進員たちの声(2023年1月)
- 初出張で感じた、写真と映像の可能性と対面で仕事をする重要性(2022年11月)
- 困難を越えつつ、ミャンマー「家族計画・妊産婦保健サービス利用促進プロジェクト」活動再開(2022年11月)