人づくり

ジョイセフの活動の中心は、持続可能なコミュニティをつくるための『人づくり』です。

途上国支援プロジェクトは、3年や5年など、あらかじめ期限を決めて成果を出すことが求められます。、開始前の計画に沿って必要な技術やサービス、施設などを提供し、問題解決につなげます。プロジェクトは終了しても、、その後もジョイセフの支援なしに女性にSRHサービスを届ける活動が続いていく社会をつくらなければなりません。

プロジェクト終了後も、支援活動が継続されるための「鍵」は何でしょうか。

それは、地域住民、つまりコミュニティの人々です。
ジョイセフは、1968年の創立以来、「まずは人づくりから」を合言葉に、研修を通じた開発途上国のコミュニティでの人づくり(人材養成)に取り組んでいます。特に、「地域保健」の分野で活躍する人づくりに力を入れています。

女性自身が、性に関する情報を得て、考え、選択し、実行し、自分の命と健康を守ることを目指すのがジョイセフのアプローチです。誰ひとり取り残さず、全ての人のSRHを実現するためには何が必要でしょうか?

その人が暮らす国、場所(地域)、年齢や環境にかかわらず、必要とされるときに正しい情報が届くこと。質の良いSRHのサービスが必要なときに、手頃な価格で、滞りなく受けられること
世界保健機関(WHO)は、地域保健を改善するために重要な「3つのAとQ」のアプローチを提唱しています。

3つのAとQとは

Availability (可用性)
保健のニーズに対応できる医療施設、スキルを備えた保健医療従事者、必要な医薬品・資機材、教育資機材などの「存在と量」を指します。

Availabilityの課題とは、例えば:
十分な研修を受けていない、あるいはかつて研修を受けて以来再研修を受けていないなどの理由で、技術面で未熟だったり、患者に親身に対応できるスキルや保健医療施設のマネジメント力を備えていないなど、保健のニーズに応えられる保健人材の存在が少ないこと。
使い勝手の良い教育教材や手に入れることのできる避妊手段の(認可の種類)に限りがあること。

Accessibility(アクセシビリティ)
保健医療施設とSRHのサービスへの物理的なアクセス。差別のない、必要な時に質の良い情報を得られる、という側面を含みます。

Accessibilityの課題とは、例えば:
保健医療施設までの距離が歩いていくには遠すぎるけれど、車などの交通手段や、それを使うための交通費が確保できない。
または医療費の負担が大きく、保健医療施設を利用したくてもできない。。
身近にサービスを提供する施設があっても、女性が自分の意志でサービスを受けることを妨げるジェンダー面の壁。
保健医療従事者の偏見による厳しい態度から、若い未婚の女性がサービスを受けにくくなってしまう。
人種や宗教による格差やハードル。
タイムリーな予防の情報は住民自らの手で伝えられてこそ、一人ひとりに届きます。また、医薬品や避妊具などの「在庫管理」のマネジメントが不十分だと、必要なものが在庫不足になり、質の良いサービスを受けられない事態につながります。

Acceptability (受容性)
患者を尊重する対応や、地域の文化・慣習に応じた質の良い情報(メッセージ)発信によって、地域住民が受け入れやすい保健医療サービスを提供することを指します。

世界の国や地域には、異なる文化や慣習、そして言語が存在し、人々はその影響のもとで暮らしています。そのため、女性が、自らが、性に関する情報を得て、考え、選択し、実行するためには、地域の文化や慣習を踏まえ、対象者となる女性の立場に配慮した情報を発信する必要があります。また、利用者の尊厳が守られ、利用者本位の視点でサービスが提供されなければなりません。

Quality (品質)
科学的及び医学的に適切な情報、保健医療サービス、医薬品の質が確保され、提供されていることを指します。

保健医療サービスの提供にあたっては、量だけでなく、質も確保されなければなりません。例えば妊婦健診を実施しているとしても、健診項目や記録が不十分で、妊婦の健康状態をきちんと把握し、必要に応じたケアの提供や病院への搬送などが行われなければ、検診件数がどれだけ多くても意味がないのです。

ジョイセフはこの3つのAとQの要は「人」であると考え、地域保健の改善に向けて、さまざまなレベルでの「人づくり」に力を入れています。
では、ジョイセフがSRHRを推進する上で鍵になると考える「人」とは具体的にどのような立場の人々でしょうか?

ジョイセフは「人づくり」を通して、女性一人ひとりを中心に、女性のパートナーや家族、地域全体が係って自らの健康を考え、支えあう地域の実現を目指しています。ジョイセフが目指すのは地域で活動する母子保健推進員や診療所のヘルスワーカーなど、女性たちに直接保健医療サービスを提供する人たちだけが能力強化されることではありません。その地域を管轄する保健行政官や現地でSRHRの分野で活動するNGOの運営能力の強化も大切な活動の一部です。
ジョイセフは設立当初から「エコロジカル・モデル」を取り入れています。
エコロジカル・モデルには、個人、対人関係、コミュニティ、組織、および政策(ポリシー)・環境の5つの階層レベルがあります。ジョイセフの人づくりはこれらの5つの全てのレベルの「人づくり」を目指しています。

プロジェクト終了後も活動を継続していくためには、さまざまなレベルでの人づくりが必要です。

ジョイセフは、1968年の創立以来、「人づくり」を合言葉に、研修を通じた途上国の人材養成に取り組んでいます。JICAと協働で各国の保健医療政策のリーダーレベルの人材を日本に招き、これまでに112カ国から約2500人を受入れています(2019年度3月現在)。

ジョイセフが手掛ける研修・人材養成の主な内容は、以下の通りです。