スーダン

  • スーダンでは、母子の健康に関わる保健指標が中東・北アフリカ地域の平均より劣る水準にあり、また約半数のプライマリーヘルスケア(PHC)*サービスを提供する保健施設では、産前検診や乳幼児のケアが提供されていない等、母子保健に焦点を当てたPHCサービスの拡大が重要課題となっています。

    これらの課題を解決するため、JICA技術協力事業として、スーダン国プライマリーヘルスケア拡大支援プロジェクトを実施し、PHCサービスに関わる人材の能力強化、サービス提供施設の機能強化などを通して、地域の妊産婦と新生児の健康の向上を目標にPHC拡大に包括的に取り組んでいます。

  • *プライマリーヘルスケア(PHC)とは
    「健康は誰もが享受できる権利であることを明言した1978年のアルマ・マタ宣言で掲げられた8つの基本行動(健康教育、安全な水の確保、予防接種奨励を含む母子保健推進、風土病対策、必須医療品の供給、コミュニティ保健ワーカーの活用、一般的疾患への対策、栄養改善)を指す。これらは廉価で、貧困地域でも全ての住民が健康であるために最低限必要な活動と位置づけられている。」(「スーダン国PHC拡大支援プロジェクト詳細計画策定調査報告書」(2015年)より)

ゲジラ州保健局職員から、PHCに関わる状況や各担当業務の聞き取り

プライマリーヘルスケア拡大支援プロジェクト

目的 質の高いプライマリーヘルスケア(PHC)サービスの提供により、地域の妊産婦と新生児の健康の向上を図る。
対象地域 ゲジラ州(東ゲジラ地区、マナーギル地区)、カッサラ州(ギルバ地区、ワドエルヘレウ地区)、ハルツーム州(ウンバダ病院、オンドルマン病院)
対象人口 実施地域の人口360万人
実施期間 2016年6月~2019年7月
実施機関 国際協力機構(JICA)
現地実施機関 スーダン連邦保健省、ゲジラ州・カッサラ州・ハルツーム州保健省

スーダンでは、プライマリーヘルスケア(PHC)の中でも特に母子保健関連の重要な指標である妊産婦死亡率(出生10万対360)および5歳未満児死亡率(出生千対76.6)が、中東・北アフリカ地域の平均(妊産婦死亡率170、5歳未満児死亡率42.5)よりも劣っています。この背景には、保健医療に携わる人材の人員および技術不足により、政府の定める必須PHCサービスがすべて提供できている施設は全体の4分の1に過ぎないという現状があり、母子保健に焦点を絞ったPHCサービスの拡大が重要課題となっています(出典:世界保健機関『世界保健統計2015』)。

このため、プロジェクトでは、PHCサービスに関わる人材の能力強化、保健施設の機能強化、コミュニティでの自発的な保健活動の推進、およびこれらを支える保健行政マネジメント能力の強化に包括的に取り組んでいきます。

5歳未満の子どもを持つ母親とのグループインタビュー

現在、プロジェクト実施前の保健施設・保健人材・住民の母子保健を中心とした健康に関する現状を把握し、活動計画策定に活かすために、ゲジラ州東ゲジラ地区とマナギル地区においてベースライン調査を実施しています。

ベースライン調査では、州・地区・保健所の職員、村落助産師、コミュニティリーダー、教員、保健ボランティア、5歳未満の子どもの母親、小学生の父親から聞き取り調査を行い、質的なデータを収集するともに、保健サービスの利用状況を定量的に把握するための世帯調査も実施しています。世帯調査のデータは、プロジェクト終了時のインパクト評価の際にも活用する予定です。