ケニア・ナイロビ 子宮頸がん予防研修を実施しました
2024.3.6
- 活動の現場から
子宮頸がんは最も予防・早期発見が可能ながんの一つです。しかしながら、低・中所得国ではまだ予防・早期発見による治療ができず、亡くなる女性も多く、世界保健機関(WHO)によると、子宮頸がんによる死亡の約90%が、アフリカを含むこれらの地域に集中しています。ケニアでは子宮頸がんは女性に2番目に多いがんで、罹患率に対する死亡率は0.61と高いです(日本は0.33)。HIV陽性の女性は免疫が低下するため、そうでない場合に比べて子宮頸がんになる可能性が6倍高く、全子宮頸がん症例の推定5%がHIVに起因しているといわれており、ケニアではHIV感染率の高さも(15〜49歳の女性の感染率:4.9%*)子宮頸がんが多い原因の一つと考えられています。
*https://www.unaids.org/en/regionscountries/countries/kenya
子宮頸がんの予防には、一次予防(HPVワクチン接種)と二次予防(がん化する一歩手前の状態である前がん病変の検査と治療)がありますが、特に二次予防の施術には、医療器材とそれらを活用して適切に診断・病変を切除する医療従事者の技術が必要です。ジョイセフが活動するケニアの首都ナイロビでは、大きな病変を切除するための機材が限られた医療施設にしか無く、さらに、それらを活用するための研修を受けた医療従事者が非常に少ない状況でした。
そこで2024年1月29日から2月1日にかけて、ジョイセフはナイロビ県保健省と共同で、大きな病変を切除するための「ループ式電気焼灼切除術による子宮頸部円錐切除術」(以下、LEEP)の器材を有する3病院の医療従事者17名を対象に、LEEP研修を実施しました。講義2日、実習2日の4日間の研修です。2日間の実習中、合計36人の女性がスクリーニングを受けましたが、うち8人がLEEPによる治療を受け、11人が国立研究所での精密検査を受けることになりました。
この研修は、第一三共株式会社のご支援による事業の下、ジョイセフのアドボケイトとしても精力的に活動している産婦人科専門医の高尾美穂先生によるご支援もあり、ナイロビ県保健省との協働で実現できました。二次予防として、LEEPによる治療を受けられる環境ができたことで、より多くのケニアの女性の子宮頸がんの早期治療が可能になり、不安を軽減できるようになりました。今後も引き続き、地域保健ボランティアと共に、早期発見のためのスクリーニングの推奨により注力していきます。
【受講者の声】
ママ・ルーシー・キバキ病院のスティーブン・ムサマ氏
この研修参加者に選ばれて嬉しく思います。おかげでLEEP施術に自信を持てるようになりました。この施術を必要とする女性たちを救える機会を与えてくれたジョイセフに感謝します。
【ジョイセフ担当者、吉留桂より】
たとえ器材があっても医療従事者が施術できていなかった状況を変えるきっかけとなる、とても意義のある研修が開催できました。ありがとうございました。
動物組織でLEEPを練習する研修参加者
病変の診断方法の実践的なセッション
- 山口 悦子
- 2004年にジョイセフ入職後、一貫してアジアとアフリカでSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事している。特にHIV/エイズ、妊産婦保健、男性参加、若者のエンパワーメントといった分野で、コミュニティを中心とした仕組みづくりに携わる。JICAのHIV/エイズ専門家としてガーナで5年の経験、JICAインドネシア事務所の保健分野の企画調査員経験を持つ。第二の故郷はガーナ。趣味は犬(ガーナ生まれ)とテニス。