フランス:人工妊娠中絶の自由と権利を憲法に明記
2024.3.3
- ジョイセフのオフィスから
2月28日にフランスの議会上院で、女性が人工妊娠中絶をする自由を不可逆的なものにして守るために、憲法に明記する法案が可決されたというニュースを聞いて、「フランスは、着々とこの憲法改正に向けた手続きを進めていたのだ」と、静かな感動を覚えました。
報道にあったように、2022年6月24日に、米国連邦最高裁判所が「憲法は中絶の権利を与えていない」という判決を下した影響への警戒感から、フランスは、人工妊娠中絶を合法としている自国の法律を守るために、与党が国会に中絶の権利を憲法に定めるための法案を提出し、政府もこれを指示することを明確にしたのです。
実は、この米国の判決があった当時、ちょうど「世界におけるSRHRの取り組み~国際社会で揺れ動くSRHR」という記事をまとめていたので、この判決をめぐる世界の動きについて情報を探しました。そして、フランスの人工妊娠中絶の歴史と法律に関するとても興味深い記事に出会いました。日本とフランスの弁護士資格を持つ金塚彩乃さんという方の記事です。金塚弁護士は、2022年7月18日のブログで、米国の判決の翌日、6月25日にはフランスで上記の動きが始まったことを書かれています。また、ブログは、同年8月に、TOKYO POSTに2回の連載で紹介されています。
以下はその内容のほんの一部です。金塚弁護士の記事のリンクを貼っておきますので、是非、読んでみてください。
フランスで人工妊娠中絶が合法化されたのは1975年。それ以前は、フランスでも中絶は犯罪とされていました。1972年に、16歳の少女が同級生に強姦され妊娠し、中絶した結果、少女と母親、同僚が堕胎罪で起訴された裁判が、中絶合法化のきっかけとなりました。弁護士は女性の自由と権利獲得のために生涯闘い続けたジゼル・アリミ、加えて弁護側証人として出廷したのは、ボーヴォワールだったとのことです。
現在、フランスでは、人工妊娠中絶の費用は100%健康保険でカバーされ、中絶を妨害する行為は、懲役や罰金が課せられる犯罪(中絶妨害罪)とされています。妨害する行為とは、医療機関や情報へのアクセスを阻害する行為、職員や女性に対して脅迫脅威を行うことなどです。
記事から、「自分のからだは自分のもの」女性がからだの自己決定権を勝ち取る闘いの歴史の一端を知ることができます。
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金塚彩乃氏 ブログ記事 2022年7月18日
http://ayanokanezuka.jugem.jp/?eid=56
金塚彩乃氏 TOKYO POST 掲載記事 2022年8月22日、9月1日
https://thetokyopost.jp/humanity/4382/
https://thetokyopost.jp/humanity/4598/
「世界におけるSRHRの取り組み~国際社会で揺れ動くSRHR」
https://www.joicfp.or.jp/jpn/column/srhr-initiatives-world-05/
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- 勝部 まゆみ
- UNDPのJPOとして赴任したガンビア共和国で日本の国際協力NGOジョイセフの存在を知り、任期終了後に入職。日本赤十字でエチオピア北部のウォロ州に赴任するために一旦ジョイセフを退職、3年後に帰国・復職。ジョイセフでは、ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた。2015年から事務局長、2017年6月から業務執行理事を兼任し、2023年6月に代表理事・理事長。