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世界のSRHRニュース:10 先進国のデータ、アフガニスタン、更年期問題、国連 

2024.7.18

  • 世界のSRHRニュース

世界で起きているセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)関連のニュースをお届けします。

News1: 先進国で出生率大幅低下

【出典】
2024年6月21 日 ロイター通信 ”先進国で出生率大幅低下、経済的懸念が重し=OECD報告
2024年6月20日 OECD報告書 ”日本

【概要】
経済協力開発機構(OECD)が発表した報告書によると、先進国の一部で出生率が大幅に低下、主な理由は経済的な負担や長期間に及ぶ資金確保への不安であり、今後も低い水準にとどまる可能性が高いことが明らかになった。

 合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子供の推定人数)のOECD加盟国平均:
1960年3.3人→2022年1.5人
特に低いのは韓国0.7、イタリアとスペインの1.2人
最も高いのはイスラエルの2.9人
日本は1.26人で、過去数十年にわたってOECD平均値を下回っている

 主要先進国の出産平均年齢:
2000年28.6歳→2022年30.9歳
日本は、2000年29.6歳→2022年32.2歳

 子どもを持たない女性の割合:
1935年生まれと1975年生まれの女性を比較→日本、エストニア、イタリア、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、スペインで倍増
日本では、1955年生まれの女性では12%だったところ、1975年生まれで28%と顕著に増加、OECD加盟国の中で最も高い割合となっている。

 日本の出生数 770,759人(2022年、 2023年の人口動態統計の速報値では、758,631人)

News2: アフガニスタンの女性就労問題

【出典】
2024年7月3 日 AP通信 ”An Afghan woman wanted to be a doctor. Now she makes pickles as the Taliban restricts women’s roles

【概要】
タリバン政権下のアフガニスタンでは、女性の就労が制限されており、世界銀行のデータによれば、2023年の女性の労働参加率は4.8%となっている。女性は公園などの公共施設への出入り禁止、強制的な服装規定もあり、同国は昨年、国連によって「女性や女児が最も抑圧された国」とされた。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)のローザ・オトゥンバエワ氏は、「数多くの才能ある女性が夢を打ち砕かれ、家に閉じ込められた状態にある」と述べている。

カブール在住のフロザン・アマザイ(33歳)は、タリバンの許可を得て就労する20万人の女性のうちの一人である。大学を卒業して医者になる夢があったが、女子は小学校の教育までしか受けられないため*、現在の仕事は縫製とピクルス作り。月給は多い時で30,000アフガニ(426ドル)にしかならない。夫は失業し、小さな子を抱え、自治体の支援もなく、生活は厳しい。

タリバン側は、女性には同国の伝統とイスラム教にのっとって「安全、安心、隔離」された労働環境を提供しているとしている。小売業や接客業は女性のみの環境に限られ、医者、科学者、ジャーナリストや政治家になる道は閉ざされている。そもそも、女性が労働許可をとる際は、書類を揃えて費用を払う必要があり、審査は厳しい。

約10,000人の会員を擁する女性商工会議所には、絨毯づくりやドライフルーツ製造などのアフガニスタンの主要産業が名を連ねるが、経営者はすべて男性、実際に働く女性たちなしでは存続できない。とはいえ、商工会議所の代表、サルマ・ユスフザイ氏は、「何もなかったときに比べれば、いまの方がまだいい」と述べている。

*小学校を卒業できる男子は67%、女子は40%と、女の子の半分以上が小学校を卒業できない(世界子供白書2023)

News3: 閉経後の女性に多い睡眠障害

【出典】
2024年6月7 日 MedPage Today ”Sleep Disturbance Common in Postmenopausal Women With Troublesome Hot Flashes

【概要】
ホットフラッシュ(上半身ののぼせ、ほてり、発汗など、更年期障害の代表的な症状)の症状がある閉経後の女性の大半が、臨床的に有意なレベルの睡眠障害(不眠症)に悩まされているとの調査結果が明らかになった。

米ハーバード大学医学部のハディーン・ジェフ医学博士によると、ホットフラッシュ症状のある女性のうち約3分の2以上が、寝つきが悪い(62〜68%)途中で目が醒める(71〜78%)寝た気がしない(66〜71%)起きたときにだるい(69〜73%)と報告していた。

回答者のほぼ4分の3が睡眠の質に不満がある(74%)、半数以上が十分な睡眠がとれていない(57-62%)と答え、大半の回答者は自身の睡眠の質を、「悪い」か「非常に悪い」(60-64%)とした。
ジェフ氏は、睡眠障害を抱える女性の多さは「驚くべきもの」だとしたうえで、加齢に伴うものと諦めている人が多いが、投薬などの治療の選択肢もあると知ってほしいとしている。

News4: SRHRに関する国連機関の共同声明

【出典】
2024年7月11 日 “Joint statement by UNFPA, WHO, UNICEF, UNAIDS and UN Women calling for sexual and reproductive health and rights for all

【概要】
2024年7月11日、世界人口デーに際し、国連人口基金(UNFPA)、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連女性機関(UNWOMEN)の国連5機関は、すべての人のための性と生殖に関する健康と権利(SRHR)に関して、共同声明を発表した。

1990年以降、近代的な避妊法を利用する女性の数は倍増し、2000年以降、妊産婦死亡率は34%減少、2022年までに世界で推定2,080万人が抗HIV治療を受けて死亡を回避できた。しかし、コロナ禍や紛争の増加、気候変動、格差の拡大等により、質の高い必要不可欠な保健サービスへのアクセスが後退し、緊急の対応が必要とされている。特に女性と女児は、暴力や差別を受けて身体の自己決定権を失いやすく、人道危機においては周縁化されてSRHRが届きにくい状況に陥る。

今年9月に国連で開催される「未来サミット(Summit of the Future)」に向けて、SRHRに関しての注力のポイントは以下の通り
・ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の一環として、エビデンスに基づく規範的ガイダンスを実施し、包括的SRHサービスへのアクセスを強化
・包括的性教育(CSE)へのアクセスの加速化による、女性の生涯に渡ったウェルビーイングの向上
・SRHRを推進する若者や女性、地域社会への支援の強化、ボトムアップの保健介入策の立案
・AIなどの先端技術の導入において官民の協力体制を構築し、幅広いサービス提供およびテクノロジーのリスクへの対応
・政府、地域社会、市民社会組織、民間を問わずすべてのセクターにおいて包括的SRHへのアクセスを優先して推進

SRHRは、すべての人が到達可能な最高水準の身体的・精神的健康を享受する権利であり、ジェンダー平等の達成に不可欠なものである。


(編集後記)
「今の日本では、夫婦別姓も同性婚もできず、想像しているよりももっとずっと多くの人が、法的には家族じゃない状況で、家族をつくっている」(p.223より)
松田青子著「自分で名付ける」は、フェミニストでもある著者が、妊娠から初期の子育ての日々において「え?」と思った日本の制度や社会(時々パートナーに対しての本音)について綴ったエッセイです。著者のジェンダーをテーマにした小説も痛快ですが、エッセイも膝を打つことばかり。選択的夫婦別姓問題、妊婦や子連れが疎まれる社会……青子さんのように推しを愛でながら「はて」と言い続けたいです(すなみ)

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