桑畑とランドセル
2018.4.10
- プライベートなこと
新年度が始まってしばらくは、朝のプラットホームでランドセルを背負っている子どもたちが気になって仕方ありません。一年生になったばかりの子どもたちにとって、電車通学は一大事だろう、と思います。でも、上級生のお姉さんやお兄さんと一緒だったり、お友達と一緒だったりするから、あまり心配しなくても良いのかな。
大昔と言われても仕方ない、私が小学生だった頃、電車に乗って学校に通うなど、少なくとも私が育った田舎では、おそらく大人にも縁遠いことだった、と思います。
学校に通った1キロちょっとの砂利道で思い出すのは、ずっと続いた桑畑です。朝は、まっしぐらに学校を目指しましたが、帰りのお楽しみで思い出すのは、冬、灰色になった桑の木に潜む尺取虫を探すこと。とにかく、尺取虫は小枝にしか見えず、感動的な擬態は芸術そのもので、時間を忘れて没頭しました。お天気が良ければ尺取虫探しはお約束の日課。何匹見つけたかを友だちと競いました。
ランドセル運びのゲームも定番のひとつ。ジャンケンポンで負けると、背中と前と左右の腕に、4人分のランドセル抱えて、だいたい20歩くらい歩いたら、もう一度ジャンケン。一体全体、家にたどり着くまでに、何回ジャンケンしたのやら。4個も抱えると、足元が見えなくて砂利に躓いて転びます。クッション代わりになったランドセルは、傷つくし、汚れました。
ランドセルは、学校に行くためのパスポートのようなものだったので、粗末に扱っているわけではなかったはずです。けれど、6年生になった頃には、あちこち色が剥げて、擦り切れて、皮はケバケバして、蓋を閉めるベルトの部分は、薄くなっていたような気がします。でも、あちこちが柔らかくなって扱いやすくなったランドセルを、ずっと大切なものだと感じていました。
今、アフガニスタンに贈るために横浜の倉庫に届けられるランドセルの状態が、とても良いことに驚きます。皮の加工技術がとても向上して、あまり痛みが目立たないようになっているそうですし、帰宅途中の道端に、ランドセルを放り出して遊ぶことは、あまりしなくなったのかもしれません。
想い出の詰まったランドセルを手放して、遠いアフガニスタンに贈ろうという決めることは簡単ではないと思います。いらないものを手放すのではない、大切だから贈りたい。大切なものだから受け取った子どもたちに笑顔が溢れる。このことを忘れずにいたいと思います。
女の子も、学校に行きたい!
すべての子どもに教育を。
- 勝部 まゆみ
- UNDPのJPOとして赴任したガンビア共和国で日本の国際協力NGOジョイセフの存在を知り、任期終了後に入職。日本赤十字でエチオピア北部のウォロ州に赴任するために一旦ジョイセフを退職、3年後に帰国・復職。ジョイセフでは、ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた。2015年から事務局長、2017年6月から業務執行理事を兼任し、2023年6月に代表理事・理事長。