2023年を振り返ってみた
2023.12.27
- ジョイセフのオフィスから
世界にとって、今年は、どんな年だったのでしょうか。
世界各地で勃発した戦争、紛争、突然の自然災害、いつ終わるとも知れない悲惨な状況、この瞬間も、爆撃の音に震える日々を過ごす人々。イスラエルとハマスの戦場となったガザの現実、ロシアのウクライナへの軍事侵略で始まり、収束の兆しの見えない戦争、トルコ・シリア、モロッコそしてアフガニスタンの地震、クーデター(2021年2月)後のミャンマーは今も混沌としており、アフガンのタリバン政権下(2021年8月~)の女性の人権侵害、スーダンでの武力衝突、日本ではほとんど報道されないソマリア、シリア、イラク、リビア、イエメンでの紛争等々、人びとの生活は破壊され、女性への性暴力が溢れ、尊厳が脅かされています。世界で、故郷や国を追われて難民となり、キャンプや慣れない土地で暮らす人々は、1億1千万人を超え、日本の総人口に迫っています。難民を受け入れる国々も、その負担に喘いでいます。
さらに、悪化の一途をたどる環境破壊と、地球沸騰化の時代とまで言われる異常気象も、健康被害をもたらす大きな原因となっています。
ニュースの映像を見ると息苦しくなって、目を背けてはいけないと思いながらもテレビを消すことが多くなり、罪悪感にさいなまれ、役立たずな自分の無力感に落ち込むこともしばしば・・・(ただ、日常の気分に戻る立ち直りも早い・・)。
国内に目を移せば、相変わらず世界に遅れをとり、特に政治経済分野で顕著な日本のジェンダー格差は、昨年、146国中125位。政治分野は138位、下から10位以内。もはや、驚かなくなったことが危険です。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の現状は、当事者である女性、特に10代から30代の、最もサービスや支援を必要としている女性たちのニーズに十分に応えていません。
ICPD、またはカイロ会議と呼ばれる1994年の国際人口開発会議で、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが女性の基本的人権であると、世界が宣言してから来年は30年です。ミレニアム開発目標(MDGs)、そしてSDGsは、繰り返し、カイロ会議の原則に立ち戻る重要性を私たちに思い出させ、日本を含む国連加盟国は、新たな誓いを立ててきました。、けれども、この数年、その誓いに逆行する行いが繰り返され、SDGsの達成は、もはや現実的ではなくなっています。
・・・課題と問題で溢れた振り返りになってしまいました・・・。
でも、責任ある市民社会の一員である私たちは、挫けてはいられないし、希望を失ってもいません。今と、そして未来に生きる日本の若い世代が声をあげて、SRHRやジェンダーの課題に気づいて、もっと知ろうとしていることに、勇気づけられる1年でもありました。国内外で世代を超えて連帯して、ジェンダーの多様性を尊重し、SRHRを推進しジェンダーの平等実現に努力すること、かつ若い人々が希望を持って幸せに生きることができる社会を作ることが、国際協力NGOジョイセフの、今の使命であり、存在意義だと考えます。
紛争地域に乗り込んでいくことは、ジョイセフにはできませんが、日本の母子保健・家族計画推進の経験を、開発途上国に紹介するために創立された国際協力NGOとして、また、日本で最も長くSRHR分野で活動してきた団体としての経験を携えて、来たる新しい年にも、地道にSRHRの推進とジェンダー平等の実現のために、前進していきたいです。
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- 勝部 まゆみ
- UNDPのJPOとして赴任したガンビア共和国で日本の国際協力NGOジョイセフの存在を知り、任期終了後に入職。日本赤十字でエチオピア北部のウォロ州に赴任するために一旦ジョイセフを退職、3年後に帰国・復職。ジョイセフでは、ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた。2015年から事務局長、2017年6月から業務執行理事を兼任し、2023年6月に代表理事・理事長。