WHOが排除を宣言した子宮頸がん 世界の高罹患率10カ国と日本のデータ
子宮頸がんは、HPV(ヒト・パピローマウイルス)が引き起こす、女性特有のがんです。
主に性交渉からHPVに感染し、そのまま居座られてしまうと、細胞が異常な形に変化した「子宮頸部異形成」を経てがんになってしまいます。
この病気の脅威にさらされているのは、日本の女性だけではありません。世界中で発生が報告されていて、特にアフリカや東南アジアに多い傾向にあります。ただ、これは予防が可能な病気です。ワクチン接種と検診、子宮頸部に病変が起きた患者に対するケアを行えば、子宮頸がんで亡くなる人を減らすことができるのです。
2018年、WHOの事務局長は声明を発表し、各国の子宮頸がんによる死亡率を1年あたり10万人に4人にすることで「子宮頸がんのない世界」を実現することが目標に掲げられました。子宮頸がんが世界中からなくなれば、病気によって選択肢が狭められることなく生きられる女性が増え、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:Sexual and Reproductive Health and Rights)も促進されます。
まずは現状を知るために、WHOの機関である「HPV Information Centre」が2021年10月に発表したレポート「Human Papillomavirus and Related Diseases Report」をもとに、HPVに起因する子宮頸がん症例の年齢標準化発生率の上位10カ国と、日本、G20の順位をお伝えします。
日本の子宮頸がん発生率は、87位。調査された176カ国のなかでは中央に位置していますが、G7の中ではワースト1位。G20に入る諸外国と比べて見てもワースト5位に位置し、とても高い数値となっています。
この背景の1つにあるのは、HPVワクチン接種の低さです。日本では2009年に承認されたHPVワクチンでしたが、接種者が訴えた体調不良をメディアがセンセーショナルに取り上げ、接種対象者への勧奨がストップしました。
その結果、ワクチンの接種率は2013年には70%から1%未満に急落しました。しかし、体調不良とHPVワクチンの関連性は見いだされず、2022年4月から厚生労働省による接種勧奨が再スタートしました。
世界中でのHPV排除に向けて、ジョイセフは現在、ザンビア(発生率3位)、ウガンダ(発生率7位)、日本(87位)で活動を開始しました。子宮頸がんのような女性の疾患予防を含めたSRHRの向上のために、国内外の団体や個人とパートナーシップを結び、課題改善に必要な人材の育成、情報発信、仕組みづくりを進めています。