📝SRHRの定義を知ろう
SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)とは、自分の体、性や生殖について、誰もが十分な情報を得られ、自分の望むものを選んで決められること。そのために必要な医療やケアを受けられること。私たちが心も体も健やかに、自分らしく充実した人生を生きるうえで欠かせない「基本的人権」です。

1.【決める】性に関する行動を起こすか、起こさないか 🧭
自慰、キスやセックスなど、あらゆる性的な行動は、するもしないもタイミングも、自分で決めていいんです。相手の「したい」「したくない」にも耳を傾けて。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 性的な経験がないことを、仲間内で揶揄(やゆ)する
- キスもセックスも、途中で怖くなって止めたいけど断れない……
- 自慰をしていることを家族にとがめられた
- 性的感情を抱かない「アセクシュアル」の存在を知らない
ジョイセフが伝えたい大事なこと
性的経験の有無で人の価値を測らない
「あいつ童貞だよね」という話が出たとき、あなたはどうしますか? 「自分もそう思ってた!」「だよねー」など同調したり、その人を値踏みしたりしてませんか? セックスの経験やパートナーの有無で、人の価値が決まるのでしょうか?
あなたのパートナーシップ、性的行為に対する興味や優先度と、ほかの人が持つ興味や優先度は違うことをぜひ知ってほしいです。それぞれの人にそれぞれのタイミングや優先順位があり、もちろん性的な経験が一生なくても、何も恥じることはありません。このような会話になったとき、私たちには話題に乗らない、笑わない、「そんなのどうでもよくない?」と投げかける姿勢が必要です。
「アセクシャル」という性的指向
恋愛的な「好き」が分からない、キスやセックスをしたいなど性的に惹かれることがない、という性的指向があります。この指向は「アセクシュアル」、または感情的と性的な感覚を分けて「アロマンティック」「アセクシュアル」と言われたりしています。
恋愛やパートナーの話になったとき、「まだいい人に会っていないだけなんじゃない?(これから出会えるよ)」という言葉が投げかけられる場面では、その裏に「誰かと付き合いたい、性的なことをしたいと思うのが当たり前」という思い込みがあります。さまざまな性格の人がいるように、性的指向もさまざまなことを知っておけたらいいですね。

2.【決める】いつ・だれと結婚するのか、しないのか 💒
したくない人との結婚や、したくないタイミングでの結婚は、その人の権利を侵害するもの。結婚したいのにできないのも、同じです。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 18歳未満の子どもが結婚させられる(児童婚)
- 対等でない関係性での結婚を強いる
- 結婚していないことを家族・第三者が気にする
- 出自などを理由に相手がふさわしくないと周囲が判断し、結婚することを許さない
- 本人には結婚したい意思がないのに、結婚を強要する
ジョイセフが伝えたい大事なこと
児童婚の現実
結婚は、誰にとっても幸せな選択であるべきですが、女性だから、生まれた国が違うからというだけで、幸せとはほど遠い行事になることも。世界では、5人に1人の女性が18歳になる前に結婚している(※)と言われています。例えばアフガニスタン人の16歳の女性は、兄の結婚の結納金(夫となる男性が妻となる女性に払う金額)を用立てるために、「先に結婚しろ」と家族から命令されました。彼女の結婚で得た結納金を兄の結婚に充てることができるから。見ず知らずの年の離れた夫に自分の人生を捧げるなんて、それを16歳で強要されるなんて、想像もできないほど悲しいことです。
結婚後は学業が続けられず、家事を強制され、本人が望んでいない性行為や意図しない若年妊娠が起こりうることも。でも、18歳未満の子どもは子どもらしくいることを楽しむ権利があるし、自分の人生を自ら決める権利があります。それを女性だから、風習だからといって奪われることのないよう、コミュニティの意識を変えていくことが必要です。特に年長者の考えを変えていくために、村の権力者など声の大きい人たちに関わってもらうことが重要です。
(※)https://www.unfpa.org/child-marriage#readmore-expand
結婚したくてもできない同性同士のカップル
日本では、書類上の性別が同性である人同士が結婚することが認められていません。でも現実では、同性のカップルのひとりが入院しても「法律的な結婚関係こそが正しいパートナーや家族である」という考えから面会できないといった事態が起きています。自治体が証明書を発行しサービスや社会的配慮を受けやすくする「パートナーシップ制度」もありますが、法的な保障は得られません。結婚しないと得られない権利があるのに、結婚できない人たちがいるのです。
すべての人は平等であり、日本国憲法の14条にも「法の下の平等」が定められています。近い将来には、結婚をしたい人すべてが結婚を選択できるようになることを願います。

3.【決める】子どもを産むかどうか、産むとしたら、いつ・どのように・何人の子どもを産むか 🚼
心から望む生き方を思い描いてみて。子どもがいるかいないかは、あなたが選ぶこと。誰かの言葉じゃなく、自分の気持ちを見つめたい。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 子どもがいない=人間として劣っていると見られる
- 配偶者の同意が得られず中絶が選択できない
- 出産時に無痛分娩が選べなかった
- 子どもがいないことを社会から非難されている気持ちになる(日本の人口減少の原因)
- 不妊治療を受けたいが、独り身なので受けられない
- 子どもは3人と夫婦で合意したが、3年以上間隔をあけたいと夫に言えない
ジョイセフが伝えたい大事なこと
パパがいることを前提にした社会の仕組み
働きながらもシングルで赤ちゃんを迎える決心をした女性は、会社にその旨を告げると、「おめでとう」の一言もなく、周りの社員にひた隠しにさせられたとか。どんどん大きくなるお腹、休職するのに周りに理由さえ言えないという状況を耐える日々を送りました。
未婚で出産することは隠すようなことでしょうか? 行政や病院のサービスも、パパがいることを前提に話が進むことも多く、ひとりで産むことを説明しなくてはいけない場面が多かったとのこと。家族が増えることがどんなかたちであっても、応援される社会であってほしいです。また、さまざまな家族や家族の始まり方があっていいはず。管理職や行政、病院関係者などは固定観念にとらわれず、日々情報をアップデートしていくことを忘れないでほしいです。
親子が幸せそうならそれがいい
「親は結婚しているか」「育てているのは両親か」など、当事者の思いにかまわず、その家庭環境を取り上げ過度に気にするような場面に遭遇したことはありますか? でも、子どもが健やかに産まれ育っている場合、どんな親かを他人が気にするのは、単なるおせっかいです。
1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」は、世界中の子どもたちの人権を定めています。そこには、子どもはその保護者がどんな人であっても差別されないといった内容も 含まれています。子どもの権利が守られ親子ともに困難に遭っていないのであれば、SRHRが守られている状況なのです。

4.【楽しむ】安全で満ち足りた性的行為 🫂
性のよろこび・プレジャーは、自分だけでなく、相手を大切にしなければ成り立たない。思いやりを交換する幸せな時間を楽しんで。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 性的な体験を、第三者への話のネタにされた
- 雰囲気を壊したくなくて避妊したいと相手に言えない
- してほしくないことを言っても止めてくれない、好きならがまんすべきと言われる
- 相手の自尊心を傷つけるような性行為を強いる
- 片方が一方的に満足し、片方は我慢して合わせている状態
- 性感染症から自分も相手も守るための行動をとらない
- AVと同じことをされて困る
- セックスはしてるけど、なんだか楽しくない
ジョイセフが伝えたい大事なこと
不安なセックスにしないために
「パートナーとのセックスでコンドームを付けたが、生理予定日に生理が来ない。生理周期は安定しているので、避妊に失敗したかもしれないと不安になった。友だちに相談し、薬局で妊娠検査薬を買って検査をしたところ『陰性」になった。その数日後に生理がきた。まだ就職したばかりで、今妊娠・出産となるとキャリアプランへの影響に不安があるので、今回は妊娠していなくてほっとした。けれど、不安な気持ちになって妊娠検査薬を使ったことをパートナーに伝えられなかった」
これは、ジョイセフで活動するなかで聞いたエピソードです。セックスや妊娠、避妊などについてをきちんとパートナーと話し合うということも、性的同意を得るうえで大事なことのひとつです。セックスを楽しむために、事前にそれぞれの考えを確認できると安心です。
セックスでもコミュニケーションが大切
セックス=挿入行為、だけではありません。何が気持ちいい・楽しいのかも、人によって違います。例えば、オーガズムを感じられなくても触れあいが楽しくて心地よい人もいますし、パートナーにはオーガズムを感じてほしい人もいます。「こうすると気持ちいいはず」と決めつけず、お互いに何をしたいか、してほしいか確認できたらいいですね。

5.【ありのままに表現する】性的な指向、自認するジェンダー、セクシュアリティ 👤
「男らしく」「女らしく」に自分を押し込めなくていい。「自分らしく」生きることは、あなたの生まれ持った権利です。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 恋愛対象になるのは異性であるという決めつけている
- 女性/男性らしいとされている格好や行動を強要する
- 「男の子は算数が得意」「女の子は料理が上手」などの固定観念がある
- 男性がスキンケアや脱毛をすることへの批判や、女性がノーメイクでいることへの批判
- 性的感情を抱かない「アセクシュアル」であることにより、偏見や批判の対象になる
- 性自認は男女に限らずさまざまあるのに、理解されない
ジョイセフが伝えたい大事なこと
赤いランドセルやスカートの制服への抵抗
子どものころは、杓子定規に、女の子は赤!男の子は黒! など決められることが多かった気がします。ランドセルの色、制服、体操着……男女に分ける必要がないものばかりで、今となっても「なぜ?」と思ってしまいます。私は赤いランドセルや中学校になったら強制されるスカートの制服が嫌でした。「女の子のもの」だったからかもしれません。赤やスカートがジェンダーに関係せず存在していたら、抵抗なく利用できたかもしれません。このジェンダーの意味合いの後ろにくっついている「女の子はか弱い、気遣いができる、おしとやか」のイメージを、私は拒否したかったんだろうなと今となって振り返ります。
ジェンダーに関わらず色を選べたり、逆にジェンダー関係なく統一した色やモノを使えるようにすることが大切です。性別で色などを固定し、身に着けることを強要することは、自分らしさと違う女性らしさ・男性らしさを強制している、その暴力性に気づきましょう。
それぞれの表現と選択を尊重しあえる社会に
自分の性別の認識、自己表現、好きになる人には、関連性はありません。例えば、産まれたときにその身体的特徴から判断された性別のままに生きる場合もあれば、違和を感じて、異なる性別、もしくはいずれかにも該当しない性として生きることもあります。
またそれとは別に、自身をどう呼ぶか、どんな服を着て、どんな性別の人を好きになるか、そもそもパートナーを欲しいと思うかなど、あらゆる性の在り方があります。
これらに優劣はありません。その人が表現し選択するありのままを尊重しましょう。

6.【選ぶ】性のパートナー 👥
どんな人でもあなたが選んだなら、唯一無二の性のパートナー。ほかの人がなんと言おうと、その事実は変わりません。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- パートナーとの年齢差を第三者がとやかく言う
- パートナーが同性であることを問題視する
- パートナーの国籍や出自などを周囲が問題視する
ジョイセフが伝えたい大事なこと
大事なのは本人の気持ち
性のパートナーがどんな人か、どう出会ったか、どのような関係性で、どのくらいの時間を一緒に過ごしてきたか/過ごそうとしているかを、他者が評価することがあります。でも、その関係性が当事者にとって幸せかどうかは本人だけが分かることで、他の人が判断することはできません。他の人に「こうした方がいい」という押しつけをせず、その人自身の選択を尊重し、ただ見守ることが大切です。
パートナーに属性は関係ない
「モテない人は外国人にパートナーを求めがち」という話題に遭遇したことはありませんか? こういうものは大抵、「日本人にモテないから」「あの人ちょっと変わってるもんね」などの見下す発言とセットになっています。
パートナーに誰を選ぶかは、あなたの自由です。よいパートナーシップを築けた人が、たまたま国籍の違う人だっただけです。パートナーがどんな人なのかで、あなたの価値が測られるのもおかしな話です。「祖国がふたつになっていいな~」とか、「国籍を超えて分かち合うってすてきだよね」とか、その人のパートナーシップのスペシャルさを言えたらいいことですよね。

7.【尊重される】自分の身体の ・不可侵性 ・プライバシー ・自主性 🚹
あなたの体は、あなた自身のもの。あなたの体のプライバシー、あなたの体について決めたことは、守られ尊重されるもの。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 不意に他人の体を触る(不可侵性がおびやかされる)
- 更衣や入浴を覗き見する
- 痴漢・レイプされたら、被害者の格好や言動のせいだと責められる
- プライベートゾーンに同意していないのに触れられる/見られる
- 性別を理由に行動を制限される
ジョイセフが伝えたい大事なこと
身体の境界線を誰とどこで引くのか
病院での診察で医師に身体を触られる、不意にパートナーに身体を触られる。必要だと知っている、好意から来るものだとわかっている、とはいっても「もやもや」を感じたことはありませんか。そのモヤモヤをなくすために、自分の要望を伝えるようにしてみましょう。
例えば、医師などの医療従事者に対しては、身体をどのように・何を診るために触るのかを知る権利があり、どのようにしてほしいか要望を伝えて不安を軽減するように調整することができるかもしれません。パートナーには、嫌だなと思ったら気持ちを伝えるようにしましょう。パートナーだから何をしてもよいということにはなりません。
自分の身体の境界線(バウンダリー)を誰とどこで引くかは、自分に決める権利があるのです。
すべての性暴力において責任があるのは、加害者
性暴力が起こったときには、「短いスカートをはいていたのが悪い」「(嫌なら)なんで逃げなかったの?」と被害者を責めたり、「(性的に)魅力があってよかったね」「痴漢なんてたいしたことないんじゃない」など被害をわい小化し被害として認めないことがあります。これらは「セカンドレイプ」(二次被害)と言い、被害者をさらに深く傷つけるものです。
すべての性暴力において責任があるのは、加害者です。被害者は何も悪くありません。どんな人にも、自分が望まないかたちで身体を触られない権利があります。直接の加害者・被害者でない周囲の人(「バイスタンダー」と呼ばれます)も知って、行動していきましょう。

8.【利用できる】性と健康に関する情報や人・もの・資金、診療や療養などのサービス 、支援/【無くす】差別、強制、搾取、暴力 🏥
社会は、知識や情報、サービスなどを提供するとともに、あらゆる差別や偏見、強制、搾取、暴力をなくしていくことで、私たちの選択を支えています。
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例えば・・・こんな困ったことをなくしたい!
- 情報が届かなかったり環境が整備されていなかったりして、性感染症の予防対策がとれない
- FGM(女性性器切除)など、医学的な理由がない処置が行われる
- 避妊方法の情報や選択肢が限られる
- 性別を理由にした差別や暴力がある
- ジェンダー的役割を強要する
- 産前、妊娠中、産後の医療ケアを十分に受けられない
ジョイセフが伝えたい大事なこと
出産後の家族計画についてのカウンセリングが弱い日本
日本は先進国の中でも40代の人工妊娠中絶率が高い国です。産後は4~5日程度入院し、多くの場合1カ月後にある産後検診や保健師などによる家庭訪問では、産後の避妊への指導がどのくらい行われているでしょうか?
実際は「1カ月半程度は性生活を避けてくださいね」と言われるくらいだと聞きます。日本が世界に誇る母子手帳にせっかくある家族計画指導欄はたったの1行だけで、どんなカウンセリングをしたのかも掲載できないし、どんなアイテムがあるのかの教材ページはないのがほとんどです。もしここで、IUD/IUSやピルなどのメリットがしっかり伝わっていたら? 意図しない妊娠を防ぎ、生理を軽く過ごせる女性が増えているはずです。しっかりと対象を捕まえられる産後に、女性主体の避妊の選択肢を伝える動きが加速してほしいです。
情報や医療サービスへのアクセスするハードルの高さ
ジョイセフ I LADY.が、15-29歳の若者を対象に恋愛や性についての意識を調査した「性と恋愛2023」によると、性について相談する相手のいない若者が3割ほどいて、情報収集の手段はインターネット・SNSが主であることが分かっています。また、ジョイセフ職員が全国の学校で実施している出前講座では毎回、「(性や身体について)もっと早く知りたかった!」「友だちにも教えたい」などの声をもらいます。多くの若者にとって、性は正しい情報や知識を得られる機会がなかなかなく、遠い事柄になってしまっているのです。
また、婦人科や泌尿器科に行くことにも高いハードルがあります。「性に奔放」という偏見の目でみられそう、どんなところか分からず怖いといった不安から、性や身体に関して悩みがあっても、相談しにくい状況なのです。さらに、専門家に繋がることができても、選択肢を示し、自分の意思で選ぶことを尊重してくれる医師と出会うことには、もう一段階ハードルがあります。
すべての人が自分も性のパートナーも守れるように、情報や医療サービスにアクセスしやすい状況をつくる必要があります。