ペニスの勃起の仕組み
――ずっと好きだった相手とついに結ばれる肝心なときに限って、勃たないのはなんで?
――イクのが早いと相手を満足させられないって聞くと、自信がなくなる
なかなか人と話すことのない勃起の仕組みについて、見ていきます。
勃起には自律神経が関係します。自律神経は全身にめぐっていて、内臓や血流や体温調節などが、うまく働くためにあります。自律神経は、活動的なときに優位になる交感神経とリラックスしているときに優位になる副交感神経に分けられます。
リラックスする神経が優位になったときに、視覚やイマジネーションの刺激・からだに触れる刺激から興奮し、血液が送られてペニスが固くなるのが勃起です。
勃起の仕組み
- 性的に興奮すると、脳がペニスに「勃起しなさい」という信号を送ります。
- この信号が神経を通って、ペニスの血管に「一酸化窒素」という特別な物質を放出させます。この物質が血管を広げる働きをします。
- 血管が広がることで、ペニスにたくさんの血液が流れ込みます。ペニスの中には「海綿体」という組織があって、ここに血液がどんどん溜まっていきます。これが、ペニスが硬くなる理由です。
- 完全に勃起すると、ペニスの中に溜まった血液が外に流れ出ないようにする仕組みが働きます。これにより、しっかりと勃起が維持されます。勃起時にペニスが上に起き上がる人も下向きのままの人もいます。
- 性的興奮が収まると、血管が元に戻り、血液が流れ出るようになります。これで勃起が収まります。
勃起しないのは恥ずかしい?
どんなに好きな人が相手でも、どんなに興奮する刺激を受けても、リラックスできていないと勃起できないことがあります。「ついに好きな人と」という緊張や「今日は妊活だから頑張らなくちゃ……」という焦り、「あの課題、早く提出しないと」などの心配ごと、「最近忙しくて頭がいっぱい」などのストレスがあると、リラックスする神経より活動的な神経の方が活発になっている可能性があります。そのようなとき、勃起しないことはよくあることです。
そのようなときは、セックスの相手に「○○(相手)が嫌いなわけではなく、大好きだけど緊張しているのかも」と伝えたり、「挿入しないセックスにしよう」「一緒にお菓子を食べるのはどう?」などと提案してみることもおすすめです。勃起の仕組みを説明したり、他の提案をしたりしても相手が寄り添ってくれない場合や、機嫌が悪くなってしまうときには、本当に健全な関係なのか一度考えてみましょう。
勃起しないことがあっても、自分を勃起障害とすぐに思い込まなくて大丈夫です。リラックスした状態で勃起できるようであれば、心配する必要はありません。
その一方で、性的な反応は好きな人とのスキンシップで起こるほかに、刺 激に対して反射的に起こってしまう場合もあります。反射的な反応によって勃起することもありますが、これは相手との 関係やその行為を望んでいるか、喜んでいるかなどとは関係 ありません。もし性暴力を受けた結果、勃起や射精をしたとしても 、同意を示したことにはなりませ ん。そして自分も楽しんでいたのかもと不安になる必要もありません。悪いのは加害者なのです。
(参考:宮崎浩一、西岡真由美『男性の性暴力被害』集英社新書/2023年)
射精は早くても遅くてもダメ?
オーガズムを感じることは、性的触れ合いのひとつの醍醐味とも言えます。でも相手とのセックスを楽しむときに、射精が早いか遅いかを気にしすぎると、緊張して楽しめなくなってしまうかもしれません。
「早漏」とは挿入後1分以内に射精してしまうことです。セルフトレーニングで改善することもできます。逆に「遅漏」は、射精の遅さに本人や相手がストレスを感じている状態です。マスターベーションの仕方が原因のこともありますが、心理的な問題が原因となることもあります。どちらも、セックスに関する性器の悩みを専門とした泌尿器科の医師に相談することができます。また、性感染症の不安などに直面したときのためにも、性器の悩みに対応できる泌尿器科や性感染症科が身近にあるか確認しておきましょう。
ただ、セックスのあり方は人それぞれなので、射精のタイミングが相手のセックスの満足度に影響しているとも限りません。射精のタイミングにこだわらず、相手と心地いい触れ合いを探してみてください。
(医学監修:泌尿器科医小堀善友)
このページは、冊子『Men’s SRHR MINI BOOK for All 〜みんなで考える、男性の健康とジェンダー〜』の内容を、ウェブに対応するための編集を加えた形で掲載しています。(冊子の情報はこちらから)